第288話感動したのはこいつが初めて

「寒いのか?」

ダニエルはたちまち不安になり、上着を脱いで彼女の肩にそっと掛けた。

いま彼は、友人に会うために高級クラブへエミリーを連れて行くところだった。周囲の視線など気にも留めず、彼女に自分のジャケットを着せてやる。

今回、エミリーもダニエルの親切を拒まなかった。

実のところ寒いわけではない。だが、その気遣いを受け取りつつ、彼女は安心させるように言った。「たぶん、誰かが陰で私のことを言ってるの。どこも具合が悪いわけじゃないわ」

ダニエルが何度も確かめて、ようやく肩の力を抜いたのはそのあとだ。

クラブのスタッフにはあらかじめ話が通っていたらしい。ダニエルとエミリーが到着すると、相...

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